※本記事にはアフィリエイト広告が含まれます
「急落した大型株を買うと戻るか」を、ちょる子『ママ投資家が育休中に1億貯めた株式投資』のルールで13万回の急落データから検証した結果です。
結論は、平均では本のとおりでしたが、1件ずつ見ると半分以上が外れでした。
- 大型株の急落は、同じ規模の平均を0.67ポイント上回った(本のとおり)
- 上回ったのは47.9%で、半分に届かない(本にはない)
- 反転を待って買うと、1日分高く買うだけだった(本と違う)
大型株の逆張りを数字で確かめたい人に向けた記事です。
資産の置き方の記事とは違い、本のルールの検証結果だけを書きます。
同じ検証をグラフで見たい人は、YouTube「数字で見る投資ラボ」の本編(7分)をどうぞ。
本を手元に置いて読み進めたい人はこちら:『ママ投資家が育休中に1億貯めた株式投資』(Kindle版、Amazon)
『ママ投資家が育休中に1億貯めた株式投資』の主張は3つにまとめられる
著者のちょる子さんは、会社で働きながら投資を続ける兼業投資家です。
2人の子どもを育てていて、育休をきっかけに株式投資に本腰を入れたと本では紹介しています。
本は2026年5月にダイヤモンド社から出ました。
前半は体験談で、ご本人の成績は口座の中の話なので、この記事では確かめません。
確かめるのは、本に書かれた売買ルールをだれかがそのまま使ったらどうなるか、です。
- 主張1:大型株が材料なしに前日比2.5%以上下げたら、売られすぎで戻りやすい
- 主張2:同じことを中小型株でやるのは危ない
- 主張3:下がっている途中には買わず、反転を確かめてから買う
相場全体については、投資家の恐怖が極端に高まった日を年に数回の大きな買い場としています。
主張1:大型株の2.5%の急落は買い場
本の中心は「大型株の逆張り」です。
逆張りとは、下がった株を買って戻りを狙う売買のしかたのことです。
規模の大きい会社の株がニュースもなく前日より2.5%以上下がったら、売られすぎと見て買います。
本には買い条件が4つありますが、今回使ったのは数字がはっきりしているこの「2.5%」だけでした。
- 25日移動平均線を大きく割る
- ボリンジャーバンドの−3σを超えて下がる
- RCI(順位相関指数)が−90%以下
この3つは本が「重なるほどよい」としている補助の条件なので、検証では土台になる2.5%だけを試しました。
主張2・3:小型株ではやらない、反転を待つ
小さい会社の株で同じ逆張りをするのは危ない、というのが2つ目です。
3つ目は買うタイミングで、下がっている途中には手を出しません。
陽線や下ヒゲが出て反転したのを確かめてから買う、という手順でした。
陽線はその日の終値が始値より高いローソク足、下ヒゲは安値から戻して終えた形をさします。
相場全体の主張:恐怖が極端な日は年に数回の買い場
本は、日本とアメリカの恐怖の指標がそろって極端な値になった日を、大きな買い場と位置づけています。
本が使う指標は利用条件の都合で使えないため、今回はアメリカの恐怖指数VIXで代えました。
VIXはアメリカ株の値動きの予想の大きさを表す数字で、ふだんは10〜20台です。
検証に使った3つの公開データ
3つの主張を、次の公開データで順番に確かめました。
| データ | 出どころ | 基準日 |
|---|---|---|
| 全上場銘柄の日足(株価・時価総額) | J-Quants | 2024年7月25日〜2026年7月24日 |
| 決算の開示日時 | J-Quants | 2024年7月23日〜2026年7月24日 |
| 日本株市場全体の日次リターン | Kenneth R. French Data Library(米ドル建て・配当込み) | 1990年7月2日〜2026年8月31日 |
| VIXの日次終値 | Cboe | 1990年1月2日〜2026年10月16日 |
計算は2026年10月17日に当方がおこない、その結果を動画と本記事にまとめています。
出典:J-Quants/Kenneth R. French Data Library/Cboe VIX Historical Data(いずれも2026年10月26日確認)
急落した大型株は平均で0.67ポイント上回る、ただし上回ったのは47.9%
まず主張1と2を、全上場銘柄の2年分で確かめました。
急落の件数は、3つの規模を合わせて13万5,380件です。
検証のルール
- 買う:前日比2.5%以上下げた日の終値
- 売る:20営業日後(およそ1か月後)の終値
- 除く:前営業日の15時以降から当日までに決算を開示した銘柄(「材料なし」の代わり)
- 規模:大型=時価総額1兆円以上(249社)、中型=300億〜1兆円、小型=300億円未満
時価総額は株価に発行済みの株式数をかけたもので、会社をまるごと買うときの値段にあたります。
本は大型株の金額を示していないので、1兆円という線は当方が引きました。
単純に比べると、どの規模も急落後のほうが高い
| 規模 | 急落の件数 | 20日後の平均:急落後 | 20日後の平均:ふだんの日 |
|---|---|---|---|
| 大型 | 7,542件(439日) | +3.9% | +1.9% |
| 中型 | 49,966件(465日) | +3.3% | +1.7% |
| 小型 | 77,872件(466日) | +2.5% | +1.4% |

大型株は、急落した日に買うと20営業日後の平均が+3.9%でした。
ふだんの日に買った場合の+1.9%より、2ポイント高い数字です。
中型も小型も同じ向きで、ここまでは本のとおりに見えます。
相場全体の戻りを除くと、上回ったのは大型だけ
ただし、この数字には落とし穴がありました。
大型株の急落が多かった日は、2025年4月7日(163件)、2024年8月5日(147件)、2026年3月3日(142件)です。
どれも相場全体が下がった日で、その後は市場ごと戻っています。
株が戻ったのか相場が戻っただけなのかを分けるため、同じ日の同じ規模の株の平均と比べました。
| 規模 | 同じ日・同じ規模の平均との差(20営業日) | 95%区間 | 平均を上回った割合 |
|---|---|---|---|
| 大型 | +0.67ポイント | +0.11〜+1.24 | 47.9% |
| 中型 | +0.21ポイント | −0.22〜+0.63 | 45.4% |
| 小型 | −0.13ポイント | −0.43〜+0.19 | 42.3% |

平均を上回ったのは大型だけで、差は20営業日で+0.67ポイントでした。
95%区間は、同じ計算を繰り返したとき差が収まる範囲の目安で、0をまたがなければ差があると言えます。
中型は区間が0をまたぎ、はっきりした差はありません。
小型は−0.13ポイントで、戻りは期待できませんでした。
1件ずつ見ると、半分以上が平均に負けていた
同じ規模の平均を上回った割合は、大型でも47.9%で半分を下回りました。
平均がプラスなのは、一部の大きな戻りが全体を引き上げているからです。
5営業日後の大型の差は+0.20ポイント(区間−0.09〜+0.48)で、こちらははっきりしません。
売買の手数料や信用取引の金利を引くと、0.67ポイントの差はさらに小さくなります。
- 主張1「大型株はもどりやすい」:一部支持(平均ではプラス、1件ずつでは半分未満)
- 主張2「小型株の逆張りは危ない」:支持(弱い)(大きく負けるわけではないが、戻りは期待できない)
→ 関連:大型株を配当で長く持つ考え方は 高配当株ポートフォリオ21銘柄|1,900万円で月4.8万円の配当を作る構成
出典:J-Quants(株価・時価総額・決算サマリ、2024年7月25日〜2026年7月24日。2026年10月26日確認)
反転を待ってから買うと、1日分だけ高く買う結果になった
次に主張3の「反転をたしかめてから買う」を比べました。
結果は、待ったほうがよかったのは4割に届きませんでした。
比べ方
- すぐ買う:急落した日の終値で買う
- 待って買う:急落の後5営業日以内に、陽線か下ヒゲが出た日の終値で買う
- 売る:どちらも急落から20営業日後の終値
急落の件数と規模の区分は、前の検証と同じです。
結果:待ったほうがよかったのは38.5%
| 規模 | 5日以内に反転した割合 | 待った日数(中央値) | 20日後:すぐ買う | 20日後:待って買う | 待ったほうがよかった割合 |
|---|---|---|---|---|---|
| 大型 | 98.4% | 1日 | +4.1% | +3.5% | 38.5% |
| 中型 | 98.4% | 1日 | +3.4% | +3.0% | 39.9% |
| 小型 | 97.4% | 1日 | +2.7% | +2.2% | 36.9% |

反転はほとんどが翌日に来ました。
陽線は珍しくないからです。
その1日で株価はもう戻り始めていて、買う値段は中央値で0.7%高くなりました。
大型株の20営業日後のリターンは、すぐ買うと+4.1%、待つと+3.5%です。
中型も小型も同じ向きでした。
勝率も変わらなかった
20営業日後にプラスだった割合は、大型ですぐ買っても待っても59.3%でした。
待つことで負けが減るわけでもありません。
慎重に見える待ち方が、この2年では1日分高く買うだけになっていました。
判定は不支持で、ここは本と違う結果です。
VIXが40を超えた日は、1年後に95.2%がプラス(36年のデータ)
最後は相場全体の主張です。
2年のデータだけでは「たまたま上がった2年」の可能性が残るので、ここは1990年からの36年分で確かめました。
ルールと見方
- 買う:VIXの終値が40を超えた日の翌営業日に、日本株全体を買う
- 売る:20営業日後、60営業日後、1年後(250営業日後)
- 日本株全体は、Kenneth R. French 教授が公開する米ドル建て・配当込みの日次データ
VIXは1990年からの9,000日あまりのうち、40を超えた日が207日しかありません。
水準ごとの結果
| VIXの終値 | 日数(1年後まで追えた日) | 回数 | 1年後の中央値 | 1年後にプラス | 60日後の中央値 |
|---|---|---|---|---|---|
| すべての日 | 9,186日 | – | +4.6% | 60.3% | +1.4% |
| 20超 | 3,315日 | 27回 | +4.0% | 57.3% | +1.9% |
| 30超 | 733日 | 23回 | +14.3% | 77.8% | +2.2% |
| 40超 | 207日 | 10回 | +22.2% | 95.2% | +4.1% |

VIXが40を超えた207日の翌営業日に買うと、1年後にプラスだったのは95.2%でした。
中央値は+22.2%で、すべての日の60.3%・+4.6%と大きな差があります。
ただし207日のうち124日は、2008年の金融危機の数か月に集まっています。
10回を1回ずつ見ると、プラスは7回
| 時期 | 1年後 | 時期 | 1年後 |
|---|---|---|---|
| 1998年9月 | +63.5% | 2011年8月 | −4.5% |
| 2001年9月 | −8.4% | 2015年8月 | +11.2% |
| 2002年7月 | −0.2% | 2020年3月 | +35.6% |
| 2008年9月 | +2.8% | 2020年10月 | +14.2% |
| 2010年5月 | +4.7% | 2025年4月 | +42.2% |

急落を1回ずつに数え直すと10回で、1年後にプラスだったのは7回でした。
2008年は最初の日(9月30日)に買うと、その後の20営業日でさらに−21.6%です。
恐怖が極端な日は長い目で見れば報われやすいものの、その日が底とは限りません。
- 2024年8月5日のVIX終値は38.6で、40には届いていない(取引時間中は65まで上がった)
- 判定:一部支持(日数で見れば95.2%、回数で見れば10回中7回)
出典:Cboe VIX Historical Data/Kenneth R. French Data Library(2026年8月版)(2026年10月26日確認)
この検証の限界と、本が向かない人
検証の限界は8つ
- 期間は2年だけ:日本株が大きく上がった時期で、下げ相場で同じ結果になるかは確かめられない
- 取引コストを入れていない:手数料・信用取引の金利・売り買いの値段の差を引くと、+0.67ポイントは小さくなる
- 配当をふくまない:調整後終値で計算している
- 「材料なし」は決算の開示だけで判定:不祥事や格下げなどの個別のニュースは区別できていない
- 本の4つの買い条件のうち使ったのは「2.5%」だけ:本の手法そのものより広い条件で試している
- 生存者バイアス:上場廃止などで20日後の株価がない急落は除いた
- VIXの検証は米ドル建て:円建てとは為替の分だけずれる。本の指標は使えずVIXで代えた
- 著者本人の売買や成績は検証していない
生存者バイアスとは、途中で消えた会社を数えないせいで、成績が実際よりよく見えることです。
信用取引は、証券会社からお金や株を借りて、手元の資金より大きく売買する仕組みをさします。
向いている人・向いていない人
数字から見て、この本が向いているのは次の人です。
- 短期売買のルールを、体験談といっしょに具体的に知りたい人
- 急落したときに何を見て判断するか、その手順がほしい人
向いていない人も3つあげます。
- 仕事の合間に、長く積み立てたい人
- 売買の手間をかけたくない人
- 信用取引のリスクを取れない人(損失が元手を超えることがある)
注意点として、いちばんのデメリットは、ルールによる上乗せが小さいわりに売買の手間と手数料が残ることです。
対処は、まず現物だけで少額から試し、1回ごとの結果ではなく件数を貯めてから判断することでしょう。
うまくいかないときは、急落した日の相場全体の下げ幅も記録し、株が戻ったのか相場が戻ったのかを分けて振り返ります。
本に書かれていない3つの視点
- この2年は上げ相場:上げ相場では下がった株も戻りやすく、下げ相場で効くかはわからない
- 平均で勝つことと毎回勝つことは別:大型株の逆張りは平均ではプラスでも、半分以上の回で同じ規模の株に負けた
- 信用取引は上乗せを金利で消す:本も注意しているが、負けたときの損失は大きくなる
もう1つの背景として、日本銀行のETF買い入れは2024年3月で終わっています。
今回の株価データ(2024年7月〜)は、その買い支えがなくなった後の市場です。
→ 関連:小型の割安株を36年のデータで見た結果は わが投資術の割安小型株は有利か|36年のデータで検証した結果
まとめ|次にやること
- 急落した大型株は、平均では同じ規模の株を0.67ポイント上回った(本のとおり)
- ただし上回ったのは47.9%で、1件ずつでは半分以上が外れ(本に書かれていない)
- 反転を待ってから買うのは、この2年では1日分高く買うだけだった(本と違う)
- VIXが40を超えた日は、36年で見ると1年後に報われやすい。ただし最初の日が底とは限らない(一部支持)
次にやることは3つです。
- 自分が買おうとしている株が、時価総額1兆円以上の大型株かどうかを確かめる
- 急落した日に買う場合と反転を待つ場合で、買値がどれだけ変わるかを過去のチャートで数えてみる
- 本を読むなら、買い条件と出口のルールが書かれた章を先に読む
検証の過程とグラフは 動画(7分25秒)にまとめています(解説役は架空のキャラクター、音声は合成音声です)。
本を読んでから数字を見直したい人はこちら:『ママ投資家が育休中に1億貯めた株式投資』(Kindle版、Amazon)
- → 関連:高配当株ポートフォリオ21銘柄|1,900万円で月4.8万円の配当を作る構成
- → 関連:老後の資産形成はS&P500一本でいい|6,500万円を定率3%で取り崩す方法
- → 関連:新NISA1800万円は何年で埋まるか|月10万で15年、月5万で30年
- → 関連:株の本おすすめ中級者向け|日本株の個別株の本をデータで比べる
この記事は書籍の主張を公開データで検証したもので、特定の銘柄の売買を勧めるものではありません。
投資の判断はご自身の責任でお願いします。
数値は2026年10月17日の計算結果で、データの基準日は本文の各表に書いたとおりです。
