Amazonで商品を見るセール会場へ

増配株は報われるか|1,263社を1年持って検証した結果

※本記事にはアフィリエイト広告が含まれます

ヘム『「増配」株投資』の「増配株は報われる」という主張を、1,263社を1年持って検証しました。

結論は、半分は本のとおりでした。

  • 増配を予想した1,263社を1年持つと、全銘柄の真ん中より5.5ポイント上(本のとおり)
  • 増配しやすいのは、利益が伸びて配当性向が低い会社(本のとおり)
  • 増配の知らせは、発表の日にもう値段に入っていた(本に書かれていない)

この記事は、本を読んで増配株に興味を持ち、数字で確かめたい人に向けています。

高配当株ポートフォリオの記事は配当を受け取る銘柄の組み方で、本記事は増配が株価で報われたかだけを書きます。

同じ検証をグラフで見たい人は、YouTube「数字で見る投資ラボ」の本編(7分)をどうぞ。

本を手元に置いて読み進めたい人はこちら:『「増配」株投資』(Kindle版、Amazon)

目次

『「増配」株投資』の主張は3つにまとめられる

著者のヘムさんは、投資歴27年の個人投資家です。

本は2025年1月にKADOKAWAから出ました。

あわせて、配当太郎さんの『新NISAで始める!年間240万円の配当金が入ってくる究極の株式投資』も補足に使います。

2人の成績ではなく、本に書かれた考え方を数字で確かめます。

  • 主張1:増配を続ける会社の株は、やがて株価も上がって報われる
  • 主張2:増配しやすい会社には条件がある(利益の伸び・低い配当性向・高すぎない利回り)
  • 主張3:利回りが高いだけの高配当株は、人気になりすぎていて最適な答えとはかぎらない

主張1:増配株は報われる

配当を増やし続ける会社は、いずれ株価もついてきて、配当と値上がりの両方で報われるという考えです。

本の中心にある主張で、今回は「増配の予想をみてから買っても報われるか」というかたちでためしました。

予想を見てから買うのは、だれでも同じ条件でできる方法だからです。

主張2:増配しやすい会社には条件がある

増配できるのは利益が伸びている会社だ、という点は配当太郎さんの本も強調しています。

配当性向は、利益のうち配当にまわす割合のことです。

これが低い会社ほど増配の余地がある、というのがヘムさんの本の見方でした。

利回りが高いだけの会社が増配するとはかぎらない、という配当太郎さんの指摘もここに入れます。

主張3:高配当株は最適解とはかぎらない

配当利回りが高い株は人気になりすぎて割高で、最適な答えとはかぎらないとヘムさんの本はいいます。

本は、2017年から2020年ごろに高配当株が振るわなかった点にもふれていました。

これは51年分の長いデータで確かめました。

検証に使った2つの公開データ

3つの主張を、次の公開データで順に確かめます。

データ出どころ基準日
全上場銘柄の株価・時価総額J-Quants(日足、調整後)2024年7月25日〜2026年7月24日
通期決算(年間配当の実績・次期の配当予想・1株益・配当性向)J-Quants2024年7月23日〜2026年7月24日に開示された決算
配当利回り別の日本株リターンKenneth R. French Data Library(Japan、円建て・配当込み)1975年1月〜2025年12月
検証に使ったデータと基準日

計算は2026年10月18日に当方がおこない、その結果を動画と本記事にまとめています。

出典:J-Quants/Kenneth R. French Data Library(いずれも2026年10月26日確認)

増配予想の1,263社を1年持つと、全銘柄より5.5ポイント上(2024〜2025年の発表)

主張1の結果は、全銘柄の真ん中より5.5ポイント上で、上回った割合は57.9%でした。

本のとおりではありますが、差は大きくありません。

検証のルール

  • 対象:通期決算で次の期の配当予想を出した会社(2024年7月26日〜2025年7月14日の発表、多くは2025年5月の3月期決算)
  • 買う:発表を株価が最初に反映した日の終値
  • 売る:250営業日後(約1年)の終値。配当は含まない
  • 物差し:同じ日に全上場銘柄を買って同じ日に売った場合のリターンの中央値
  • 増配予想・据え置き予想・減配予想の3つに分けて比べる

中央値は、全部を並べたときの真ん中の値で、一部の大きな値上がりにひっぱられません。

結果:増配予想は+5.5ポイント、据え置きは+0.3、減配は+2.6

次期の配当予想件数1年後のリターン(中央値)全銘柄の中央値との差上回った割合
増配予想1,263+20.4%+5.5ポイント57.9%
据え置き予想1,161+15.0%+0.3ポイント50.6%
減配予想329+16.0%+2.6ポイント54.1%
発表を反映した日の終値で買い、250営業日後に売った場合(配当を含まない)
増配予想・据え置き・減配予想の会社を1年持った成績を全銘柄とくらべたグラフ
増配予想の会社を1年持った結果(配当を含まない、当方作成)

増配予想は、1年後のリターンの中央値が+20.4%でした。

据え置き予想は全銘柄とほぼ同じで、上回った割合もちょうど半分です。

ところが、減配予想も+2.6ポイント上でした。

配当を出す会社が全体として強い2年だった、と見るのが自然でしょう。

次期の配当予想TOPIX連動ETFに勝った割合
増配予想31.4%
据え置き予想24.9%
減配予想28.9%
同じ1年のTOPIX連動ETFは平均+39.3%

TOPIXは東証に上場する会社全体の値動きを表す指数で、この1年は大型株が強い相場でした。

増配予想の会社を持っていても、指数に勝てたのは3社に1社ほどだったことになります。

増配の知らせは、発表の日にもう値段に入っていた

本に書かれていない点が1つあります。

発表を反映した日の値動きは、増配予想が中央値で+0.61%、減配予想が−1.67%でした。

増配予想の大きさ件数全銘柄の中央値との差上回った割合発表の日の値動き(中央値)
10%以下569+3.3ポイント56.1%0.0%
10〜30%471+9.5ポイント61.6%+0.95%
30%超223+4.4ポイント54.7%+2.8%
増配予想の大きさ別(1年後の成績と、発表の日の値動き)
発表の日の値動きの棒グラフ。増配予想は上がり、減配予想は下がった
発表の日にすでに株価が動いていた(当方作成)

10〜30%の増配予想がいちばん上乗せが大きく、+9.5ポイントで上回った割合も61.6%でした。

30%をこえる大きな増配予想は、発表の日だけで+2.8%動いています。

その分、後から買った人の上乗せは+4.4ポイントにとどまりました。

よい知らせは発表の日に先に値段に入る、というのがデータの示すかたちです。

参考:実際に増配した会社の同じ1年

後から見た結果として、実際に増配した1,828件の株価も調べました。

年間配当の実績件数全銘柄の中央値との差上回った割合
増配1,828+7.9ポイント60.7%
据え置き701−5.1ポイント41.8%
減配353−2.5ポイント47.6%
前期の決算発表から今期の決算発表までの株価(約1年)

増配した会社は全銘柄の真ん中を+7.9ポイント上回り、据え置きと減配は下回りました。

ただし同じ年のできごとなので、増配したから上がったとはかぎりません。

株価が上がるような業績の会社が増配した、という向きもありえます。

出典:J-Quants(決算サマリ・株価、2026年10月26日確認)

増配しやすいのは、利益が伸びて配当性向が低い会社(2,882社)

主張2は本のとおりで、利益・配当性向・利回りの3つとも増配の割合にはっきり差が出ました。

前期と今期の年間配当がそろう2,882社を調べています。

全体では増配が63.4%、減配が12.2%、増配率の中央値は8.7%でした。

1株益が増えた会社の76.6%が増配

1株益の変化社数増配した割合減配した割合増配率の中央値
20%超の減益65641.5%27.1%0.0%
0〜20%の減益38759.7%12.9%4.2%
0〜20%の増益65077.7%5.7%10.0%
20%超の増益1,00775.9%5.0%20.0%
前期から今期の1株益の変化と、年間配当の変化(2,882社のうち1株益がとれる会社)
1株益の伸びごとに翌期に増配・減配した会社の割合をくらべた棒グラフ
1株益の伸びと、翌期の増配・減配(当方作成)

1株益(EPS)は、利益を株式数で割ったもので、1株あたりの利益です。

1株益が増えた会社は76.6%が増配し、減配は5.3%でした。

20%をこえる減益の会社では増配が41.5%にとどまり、27.1%が減配しています。

いっぽうで、増配した会社の28.5%は1株益が減っていました。

配当性向を上げて増配を続けたかたちで、これが続くかは利益しだいです。

利回りが約4.7%以上の会社は、減配が27.2%

利回りの段階利回りの範囲社数増配した割合減配した割合
1(低い)0.06〜1.79%57464.5%7.7%
21.79〜2.71%57367.4%8.2%
32.71〜3.60%57466.6%8.7%
43.60〜4.66%57366.5%9.6%
5(高い)4.66%以上57453.0%27.2%
前期の配当利回り5段階と、今期の増配・減配の割合
配当利回りの5段階ごとに翌期に増配・減配した割合の棒グラフ。利回りが高いほど減配が多い
配当利回りの高さと、翌期の増配・減配(当方作成)

利回りがいちばん高いグループだけ、増配が53.0%と少なく、減配が27.2%と多くなりました。

ほかの4つのグループの減配は1割未満です。

高い利回りのうらに減配の心配がかくれていることがある、と読めます。

配当性向30%以下の会社の70.4%が増配

配当性向社数増配した割合減配した割合
30%以下96170.4%10.3%
30〜50%1,10370.3%12.1%
50〜80%39158.1%12.5%
80%超25836.8%16.7%
前期の配当性向と、今期の増配・減配の割合
配当性向の高さごとに翌期に増配した割合の棒グラフ。配当性向が低い会社ほど増配した
配当性向が低い会社ほど増配した(当方作成)

配当性向が30%以下の会社は70.4%が増配し、80%をこえる会社は36.8%でした。

利益の大半をすでに配当にまわしている会社には増配の余地が少ない、という本の見かたのとおりです。

配当太郎さんの本が期待するPBR1倍割れの会社は、どうだったでしょうか。

PBR社数増配した割合減配した割合
1倍未満1,62260.9%12.0%
1倍以上1,24467.1%12.5%
PBRと、今期の増配・減配の割合

1倍割れの会社の増配は60.9%で、1倍以上の67.1%より少なめでした。

PBRは株価が1株あたりの純資産の何倍かを表す数字で、1倍未満は帳簿の価値より株価が安い状態です。

「割安な会社ほど還元がふえる」は、この2年のデータでは見つかりませんでした。

出典:J-Quants(決算サマリ、2026年10月26日確認)

高配当株は51年で166倍、ただし4年近く負けた時期があった

主張3は、長い目では高配当株が報われていたので「一部支持」です。

1975年から2025年までの51年、日本株を配当利回りで分けたデータを見ました。

  • Kenneth R. French教授が公開している日本株の月次データ(円建て・配当込み・時価総額加重)
  • 高配当は利回りの上位30%、低配当は下位30%。ほかに無配と市場全体
  • 期間は1975年1月から2025年12月までの51年

時価総額加重は、大きな会社ほど重みが大きい計算で、TOPIXと同じ考え方です。

→ 関連:配当を受け取る銘柄の組み方は 高配当株ポートフォリオ21銘柄|1,900万円で月4.8万円の配当を作る構成

1円が51年で何倍になったか

系列年率51年で何倍年率の変動最大下落
高配当(上位30%)10.5%166倍17.5%−54.6%
市場全体7.0%31倍17.2%−65.7%
無配5.4%15倍26.0%−82.2%
低配当(下位30%)3.6%6倍18.9%−83.9%
1975年1月〜2025年12月の累積(円建て・配当込み・時価総額加重)
日本株を配当利回り別にわけた51年の累積リターンの折れ線グラフ
配当利回り別の51年(円建て・配当込み、当方作成)

高配当株は年率10.5%で166倍、市場全体は7.0%で31倍でした。

51年のうち37年で、高配当が市場に勝っています。

配当を出さない会社は年率5.4%、利回りが低い会社は3.6%にとどまりました。

最大下落も高配当が−54.6%で、4つの中でいちばん小さい値です。

2017年4月〜2020年は本のとおり負けていた

期間高配当市場全体低配当
1975〜1989年22.9%18.4%12.8%
1990〜2012年0.4%−3.2%−6.5%
2013〜2025年16.0%13.6%12.6%
2017年4月〜2020年2.8%7.5%14.8%
2021〜2025年25.5%15.3%6.9%
時期ごとの年率リターン(円建て・配当込み)
時期ごとに高配当株と市場全体の年率をくらべた棒グラフ
時期ごとの年率。高配当が負けた時期もある(当方作成)

本が指摘する2017年4月から2020年は、高配当が年率2.8%で市場の7.5%に負けていました。

5年ごとにくぎると、1995〜1999年も高配当が年率−4.2%で市場に8.7ポイント負けています。

その後の2021年からの5年は、高配当が年率25.5%と大きく上回りました。

高配当株は「ながい目では勝つが、数年つづけてまける時期がある」やり方だと数字は示しています。

出典:Kenneth R. French Data Library(International Country Portfolios、Japan)(2026年10月26日確認)

この検証の限界と、本が向かない人

検証の限界は5つ

  • 期間:株価と決算は2年分だけで、日本株が大きく上がった時期。増配予想を見てから1年持つ検証は、2024年7月〜2025年7月の発表の1回分しかない
  • 配当:リターンは株価だけで、受け取る配当は含めていない。配当を入れると、配当を出す会社がさらに有利に出る
  • 連続増配:2年分の決算では1回の増配・減配しか見られず、連続増配は確かめていない。「連続増配宣言」「DOE」「累進配当」の会社も区別していない
  • 51年のデータ:時価総額加重で大きな会社の影響が大きい。手数料・税金は含まない
  • 著者の成績:2人の売買や運用成績は検証の対象外

比べる相手の「全銘柄の中央値」には無配の会社も含むので、配当を出す会社はどの予想でも少し上に出やすい点にも注意してください。

この2年は増配した会社が6割をこえ、減配は1割ほどの好調期でした。

景気がわるい時期に同じ結果になるかは、このデータではわかりません。

向いている人・向いていない人

数字から見て、この本の物差しが向いているのは次の人です。

  • 配当が増えていくのを楽しみに、年単位で長く持ちたい人
  • 利益の伸びや配当性向から、増配しそうな会社を自分でさがしたい人
  • 指数に負ける年があっても、配当の増え方を物差しにできる人

向いていない人も2つあげます。

  • 短い期間で大きく値上がりする株をさがしたい人(増配の効果は年単位でゆっくり表れる)
  • 多くの銘柄に分けて持つ方法なので、会社を調べる手間をかけたくない人

このデメリットへの対処は、増配の発表を見てすぐとびつかず、利益と配当性向を確かめてから年単位で持つことです。

本に書かれていない3つの視点

1つめは、増配の知らせが発表の日に先に値段に入ることです。

後から買う人の上乗せは、そのぶん小さくなります。

2つめは、減配予想の会社も全銘柄の真ん中に勝った2年だったことです。

増配の効果と相場全体の強さを、1回の検証では切り分けられません。

3つめは、高配当株でも4年近く市場に負け続けた時期があったことです。

まとめ|次にやること

  • 増配予想の1,263社を1年持つと、全銘柄の中央値より+5.5ポイント、上回った割合は57.9%(本のとおり)
  • ただし減配予想も+2.6ポイント上で、TOPIX連動ETFに勝ったのは31.4%(本に書かれていない)
  • 増配しやすいのは、1株益が伸びて配当性向が低く、利回りが高すぎない会社(本のとおり)
  • 高配当株は51年で166倍と市場の31倍に勝ったが、2017年4月〜2020年は負けていた(一部支持)

次にやることは3つです。

  1. 気になる会社の決算短信で、1株益の変化と配当性向、次の期の配当予想の3つを見る
  2. 増配の発表の日に買うのではなく、発表の日の値動きを見てから金額を決める
  3. 本を読むなら、増配銘柄の選び方(配当性向)の章を先に読む

検証の過程とグラフは 動画(7分18秒)にまとめています(解説役は架空のキャラクター、音声は合成音声です)。

本を読んでから数字を見直したい人はこちら:『「増配」株投資』(Kindle版、Amazon)

補足に使った配当太郎さんの本はこちら:『新NISAで始める!年間240万円の配当金が入ってくる究極の株式投資』(Kindle版、Amazon)

この記事は書籍の主張を公開データで検証したもので、特定の銘柄の売買をすすめるものではありません。

投資の判断はご自身の責任でおねがいします。

数値は2026年10月18日の計算結果で、データの基準日は本文の各表に書いたとおりです。

目次