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高配当株の本のなかでも、増配株投資を扱う配当太郎さんとヘムさんの本を、データで比較しました。
どれから読むかを決めたい人に向けた記事です。
結論は、新NISAで少しずつ配当を増やすなら配当太郎さんの本、会社を自分で調べて多くの銘柄に分けるならヘムさんの本です。
比べる軸は、次の3つにしました。
- 利回りをおもく見るか、増配をおもく見るか
- どれくらいのお金を前提にしているか
- 本の主張を、データで確かめるとどうだったか
迷ったら、分量が半分以下の配当太郎さんの本から読むと入りやすくなります。
検証の細かい数字は別の検証記事にまとめたので、この記事は本選びに絞ります。
| 本 | 向く人 | 学べること | 出版年 | 分量 |
|---|---|---|---|---|
| 配当太郎さんの本 | 新NISAで配当株を始める人 | 増配で配当を増やす考え方と、計画の立て方 | 2024年5月 | 約8.2万字(約2時間44分) |
| ヘムさんの本 | 会社を自分で調べたい人 | 増配しそうな会社の見分け方と、調べ方の手順 | 2025年1月 | 約18.8万字(約6時間16分) |
先に本のページを見たい人は、こちらからどうぞ。
- 新NISAで配当を育てたい人:『新NISAで始める!年間240万円の配当金が入ってくる究極の株式投資』(Kindle版、Amazon)
- 会社を自分で選びたい人:『「増配」株投資』(Kindle版、Amazon)
2冊の違いは「利回りの見方」と「前提にするお金の大きさ」
2冊とも、配当が年ごとに増える「増配」を軸にしているところは同じです。
違うのは、利回りをどこまでおもく見るかと、どれくらいのお金を前提にしているかでした。
| 軸 | 配当太郎さんの本 | ヘムさんの本 |
|---|---|---|
| 利回り | 利回りと増配の両方を見る | 利回りが高いだけの株は、もう割高と見る |
| 狙う会社 | 名の知れた大きな会社が真ん中 | 小さくて割安な会社が真ん中 |
| 持ち方 | お金が増えるまでは銘柄を絞る | 数百の銘柄に広く分ける |
| お金 | 年12万円の配当から始める | 副題では、著者の資産を3.7億円としている |
| 制度 | 新NISAの成長投資枠が軸 | NISAは運用の一部だけに使う |
利回りの見方:配当太郎さんは両方、ヘムさんは増配を先に見る
配当太郎さんの本は、利回りと増配の両方を見て会社を選ぶ立場です。
本の試算でも、配当利回り3%を前提に、新しく入れるお金を計算しています。
第2章の「『高配当株』を買っても増配するとは限らない」では、利回りだけで選ぶあやうさにもふれました。
ヘムさんの本は、もっと増配に寄った立場をとっています。
利回りの高さだけで選ぶ株は人気があつまり、もう割高になっている、という見方を第1部で示しました。
お金の大きさ:年12万円から始める本と、数百の銘柄に分ける本
配当太郎さんの本は、年12万円の配当から年240万円までを、だんだんと目指す道のりを試算で示しています。
新しく入れるお金は、成長投資枠の上限と同じ1,200万円ほどをみこんでいました。
ヘムさんの本では、著者が2024年10月末の時点で360を超える銘柄を持っていると書いています。
- 配当太郎さんの本:少ない銘柄を、お金に合わせて少しずつ買い足す
- ヘムさんの本:たくさんの銘柄に分けて、全体の成績で勝ちを狙う
銘柄の数をそろえるには、まとまったお金と調べる時間がいります。
お金が少ないうちは形をまねるより、考え方と調べ方をかりる読み方が合う、というのが編集部の見方です。
データで確かめた主張は、2冊で9つ
当方では、2冊の主張を公開データで計算し直しました。
判定は「支持」「一部支持」「支持されなかった」の3つに分けています。
| 本 | 支持 | 一部支持 | 支持されなかった |
|---|---|---|---|
| 配当太郎さんの本 | 2つ(1株益の伸び・高配当株の増配) | 0 | 1つ(PBR1倍割れ) |
| ヘムさんの本 | 3つ(配当性向・小さな会社の数・米国株のPER) | 3つ(増配株の株価・高配当株の51年・値動き) | 0 |
配当太郎さんの本は3つのうち2つが支持で、ヘムさんの本は6つすべてが支持か一部支持でした。
使ったデータと期間は、次の表のとおりです。
| データ | 出どころ | 期間 |
|---|---|---|
| すべての上場している会社の株価 | J-Quants | 2024年7月25日〜2026年7月24日 |
| 決算(配当・1株益など) | J-Quants | 2024年7月23日〜2026年7月24日の開示 |
| 日本株の配当利回り別の成績 | Kenneth R. French Data Library | 1975年1月〜2025年12月(51年) |
| 米国株のPER | Robert Shillerのデータ | 1871年1月〜2023年6月 |
出典:J-Quants/Kenneth R. French Data Library/Robert Shiller(2026年10月28日確認)
『新NISAで始める!年間240万円の配当金が入ってくる究極の株式投資』は配当を育てる道筋を学ぶ本
配当太郎さんの本で学べる3つのこと
本の真ん中にあるのは、増配で配当を毎年増やし、受け取った配当をまた投資に回す考え方です。
- 配当の増え方を、増配・配当の再投資・新しい投資の3つに分けて考える見方
- 1株益(1株あたりの利益)の伸びから、増配が続きそうかを見る考え方
- 年ごとの配当の目標を決めて、計画どおりにつみあげていくすすめ方
第4章では会社を1社ずつとりあげ、第5章では組み合わせの例を示しています。
会社の名前や組み合わせの中身は、本で確かめてください。
データで確かめた結果:1株益を見る物差しは支持
本の主張のうち3つを、すべての上場している会社の2年分の決算で計算し直しました。
| 本の主張 | 判定 | 当方の計算(2,882社) |
|---|---|---|
| 増配には1株益の伸びがいる | 支持 | 1株益が増えた会社の76.6%が増配、減配は5.3% |
| 高配当株が増配するとは限らない | 支持 | 利回りが約4.7%以上の会社は増配53.0%、減配27.2% |
| PBR1倍割れの会社は還元が増える | 支持されなかった | 増配は1倍未満で60.9%、1倍以上で67.1% |
本の真ん中にある「1株益ののびをみる」という物差しは、データでも支持の判定でした。
利回りがうえから2割の会社は減配が27.2%で、ほかの4つの段階(8〜10%)のおよそ3倍にのぼります。
一方、PBRが1倍を割る会社ほど増配しやすい、とはいえませんでした。
PBRは、株価が1株あたりの純資産の何倍かを表す数字です。
数えたのは、前の期と今の期の年間配当がそろう2,882社です。
新NISAの制度と、書名の「240万円」の違い
この本は、新NISAが始まったあとの2024年5月にでました。
本が軸にする成長投資枠の上限は、金融庁のページの記載と同じです。
| 項目 | 金融庁のページの記載 |
|---|---|
| 始まった時期 | 2024年1月(制度は恒久化) |
| 成長投資枠 | 年間240万円 |
| つみたて投資枠 | 年間120万円 |
| 生涯の上限 | 1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円) |
| 持てる期間 | 無期限 |
| 売ったとき | 簿価のぶんだけ、翌年以降に枠が戻る |
出典:金融庁「NISAを知る」(2026年10月28日確認)
書名の「年間240万円」は受け取る配当の額で、成長投資枠の年間240万円とは別の数字です。
本の計画は、成長投資枠の生涯の上限1,200万円のなかで組み立てています。
NISAで配当を受け取るときの設定は、口座のある証券会社の案内で確かめてください。
配当太郎さんの本が向く人、向かない人
編集部は、この本が合うのは次のような人だと見ています。
- 新NISAの成長投資枠で、配当を目当てに株を買い始めたい人
- 年ごとの配当の目標を数字で立てて、計画どおりにすすめたい人
- 少ない銘柄を長く持ち、1社ずつみまもりたい人
反対に、小さな会社を探したい人や、決算を細かく読みたい人にはもの足りないかもしれません。
そのときは、次に紹介するヘムさんの本が合います。
新NISAで配当を育てる計画の立て方を知りたい人はこちら。
『新NISAで始める!年間240万円の配当金が入ってくる究極の株式投資』(Kindle版、Amazon)
『「増配」株投資』は増配しそうな会社を自分で選ぶ方法を学ぶ本
ヘムさんの本で学べる3つのこと
本の真ん中にあるのは、増配が続きそうな小さくて割安な会社を数多く持ち、全体で勝つという考え方です。
- 配当性向(利益のうち配当に回す割合)などから、増配の余地を見る考え方
- 1社の決算やお金の具合を順番に調べる手順と、その実例
- 暴落のときにあわてず買いむかうための、お金と心の備え
第1部の「04 増配は神」で、増配がよいわけと、会社の選び方をまとめています。
第3部では、PERやPBRやTOB(会社の買収のために株を買いあつめること)まで、応用の知識を扱いました。
著者のヘムさんは、投資歴27年の個人投資家です。
データで確かめた結果:会社を選ぶ物差しは支持
ヘムさんの本の主張6つを、日本株と米国株のデータで計算し直しました。
| 本の主張 | 判定 | 当方の計算 |
|---|---|---|
| 増配する会社の株は報われる | 一部支持 | 増配予想の1,263件を1年持つと、すべての銘柄の中央値より+5.5ポイント |
| 配当性向が低いほど増配の余地がある | 支持 | 配当性向30%以下は増配70.4%、80%超は36.8% |
| 高配当株がいちばんよい答えとは限らない | 一部支持 | 51年で、高配当は年率10.5%、市場全体は7.0% |
| 小さく割安な株は値動きがおだやか | 一部支持 | βの平均は小型割安株0.56、すべての上場している会社0.58 |
| 上場している会社の半分より多くは時価総額300億円未満 | 支持 | 2026年7月24日の時点で55.3% |
| 米国株のPERは、これまでと比べて高い | 支持 | 2023年6月のS&P500は24.0倍、1871年からの中央値は14.9倍 |
1つめの主張は、次の条件で計算しました。
- 2024年7月〜2025年7月に「つぎの期は増配」と予想した決算を対象にする
- 発表が株価に最初にあらわれた日の終値で買い、250営業日後(約1年後)の終値で売る
- 比べる相手は、同じ日にすべての銘柄を買って同じ日に売ったときの中央値
- 配当は含めず、株価だけで計算する
真ん中の主張「増配株はむくわれる」は、半分は本のとおりでした。
増配を予想した会社は、同じ日にすべての銘柄を買ったときの中央値(真ん中の値)を、57.9%の割合で超えています。
配当性向が低い会社ほど増配しやすい、という会社選びの物差しは、データでも支持の判定です。
βは、市場全体が1動いたときに、株価がどれだけ動くかを表す数字です。
本に書かれていない注意点:知らせは発表の日に値段に入る
計算してみると、本には書かれていない注意点も見えてきました。
- 増配の知らせは、発表の日に値段に入る(増配予想の中央値は+0.61%、30%を超える増配予想は+2.8%)
- 同じ1年のTOPIX連動ETF(平均+39.3%)を上回ったのは、増配予想の会社でも31.4%
- 減配予想の会社も、すべての銘柄の中央値を+2.6ポイント上回った
高配当株も、2017年4月〜2020年は年率2.8%で、市場全体の7.5%に負けていました。
増配株や高配当株が報われるのは年単位の話で、短い期間では市場に負ける時期もあります。
→ 関連:増配株は報われるか|1,263社を1年持って検証した結果
ヘムさんの本が向く人、向かない人
編集部は、この本が合うのは次のような人だと見ています。
- 決算やお金の具合を読んで、会社を自分で選びたい人
- 銘柄を広く分けて、長いあいだ持ち続けたい人
- 配当だけでなく、株価の割安さもおもく見たい人
反対に、時間を取れない人や少ない銘柄で始めたい人には、負担の大きい本です。
分量も約18.8万字あり、配当太郎さんの本の2倍を超えます。
増配しそうな会社の見分け方と、調べ方の手順を知りたい人はこちら。
この2冊が向かない人と、そのときの代わり
2冊とも、一つ一つの株を自分で選んで持つことが前提です。
前提が合わない人は、別の道から考えるほうが近道になります。
会社を調べる時間をかけたくない人
ヘムさんの本も第1部で、初めての人や、銘柄選びに時間をかけたくない人にはインデックス投資が合うと書いています。
インデックス投資は、市場全体に合わせて動く投資信託を持ち続けるやり方です。
→ 関連:インデックス投資の本おすすめ|主張を公開データで確かめて選ぶ
つみたてと、取り崩しの数字は、別の記事で詳しく出しました。
→ 関連:老後の資産形成はS&P500一本でいい|6,500万円を定率3%で取り崩す方法
配当を受け取る組み方の全体像を、先に知りたい人
本を読む前に、配当の額から逆算した組み方の例を見たい人もいるはずです。
当サイトでは、配当の目標の額から逆算した組み方の例を、数字つきでまとめています。
例を先に見ておくと、本の考え方が自分のお金にどう当てはまるかを思い浮かべやすくなります。
→ 関連:高配当株ポートフォリオ21銘柄|1,900万円で月4.8万円の配当を作る構成
検証の限界と、デメリットへの対処
当方の検証には限界があり、本の主張を全部確かめたわけではありません。
- 株価と決算は2年分だけで、日本株が大きく上がったころにあたる
- 株価だけで比べ、受け取る配当はリターンに入れていない
- 「連続増配」は、2年分の決算では確かめられない
- 51年のデータは大きな会社の影響が大きく、手数料と税金を含まない
- 著者2人の売買や成績は、検証していない
対処として、本の物差しは会社を選ぶときの目安として使い、成績の見通しとは分けて読むのが安全だと編集部はみています。
2冊を読む順番は、迷ったら配当太郎さんの本から
1冊目に配当太郎さんの本を読むわけ
分量が約8.2万字と短く、新NISAの枠の使い方から話が始まるためです。
この本で、増配の考え方と1株益を見る物差しがわかります。
1株益の物差しは、当方の計算でも支持の判定でした。
2冊目にヘムさんの本を読むと、ふかまるところ
2冊目にヘムさんの本を読むと、配当性向やお金の具合までふみこんで、会社を調べるやり方がわかります。
小さな会社や広い分散など、1冊目と違う考え方もでてきます。
2冊の意見が違うところは、自分のお金と時間に合うほうを選ぶ材料です。
まとめ|次にやること
- 新NISAで配当を少しずつ育てたいなら、配当太郎さんの本(2024年5月、約8.2万字)
- 会社を自分で調べて広く分けたいなら、ヘムさんの本(2025年1月、約18.8万字)
- 1株益と配当性向をみる物差しは、当方の計算でも支持だった
- 「増配株はむくわれる」は一部支持で、知らせは発表の日に値段に入っていた
次にやることは3つです。
- 自分が使えるお金と、会社を調べられる時間をかきだす
- 金融庁のページで、成長投資枠の上限と、自分が使える残りを確かめる
- 迷ったら、短い配当太郎さんの本から読み始める
1冊に絞るなら、新NISAの枠の使い方から読める配当太郎さんの本が入り口になります。
『新NISAで始める!年間240万円の配当金が入ってくる究極の株式投資』(Kindle版、Amazon)
- → 関連:増配株は報われるか|1,263社を1年持って検証した結果
- → 関連:新NISA1800万円は何年で埋まるか|月10万で15年、月5万で30年
- → 関連:投資本の読む順番|初心者におすすめの1冊目を目的別に
- → 関連:高配当株ポートフォリオ21銘柄|1,900万円で月4.8万円の配当を作る構成
この記事は書籍の紹介で、特定の銘柄の売買を勧めるものではありません。
投資の判断はご自身の責任でお願いします。
検証の数値は2026年10月18日の計算結果で、データの基準日は本文の表に書いたとおりです。
