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オリバー・ベレスとグレッグ・カプラの『デイトレード』を、読むかどうか決めたい人に向けたレビューです。
結論は、売り買いの手法ではなく、負け方と心の持ち方を学ぶ本です。
日本語版は原書の前半だけの訳で、指標の見方などを扱う後半は入っていません。
読むかどうかの判断の軸は、次の3つにしました。
- 手法と心構えの、どちらを学びたいか
- 2000年前後のアメリカの市場が前提でもかまわないか
- 損失が大きくなりうる短期売買を、自分のお金で続けられるか
迷ったら、日本の制度で手順を学べる本を先に読み、この本は2冊目に回す順番を編集部はすすめます。
| 本 | 向く人 | 学べること | 出版年 | 分量 |
|---|---|---|---|---|
| ベレス、カプラの本 | 短期売買の心構えを先に固めたい人 | 損失との付き合い方、賭けとの違い | 2002年10月(原書は2000年) | 約17.7万字(約5時間54分) |
| 紫垣英昭さんの本 | 日本の口座や道具の準備から知りたい人 | 信用取引の口座づくりと、著者の売り買いのやり方 | 2024年8月 | 約5.9万字(約1時間58分) |
| cisさんの本 | 日本の個人トレーダーの考え方を読みたい人 | 相場で仮説を立てる考え方と、著者の歩み | 2018年12月 | 約7.9万字(約2時間38分) |
先に本のページを見たい人は、こちらからどうぞ。
『デイトレード マーケットで勝ち続けるための発想術』(Kindle版、Amazon)
『デイトレード』は損失との付き合い方を学ぶ、心構えの本
この本で学べる4つのこと
この記事は本の代わりになる要約はせず、読むかどうかを決める材料に絞って書きます。
本の真ん中にあるのは、小さく負けて生き残ることこそ売り買いの腕前だ、という考え方です。
- デイトレードと投資を、目的も行動も違う別のものとして分ける見方
- 損失が小さいうちに手じまいし、負けから学ぶという損失との付き合い方
- 興奮を求める賭けと、計画に沿った売り買いを分ける見方
- 売り買いのたびに反対側の相手がいる、という市場のとらえ方
本文を確かめると、第3章と第5章は負けをどう扱うかに多くのページを使っていました。
第6章では、負けた売り買いを書き留めて見直すくせも取り上げています。
損切りの位置や売り買いの条件のような詳しい決まりは、この記事では書きません。
本の形:短い項目と「POINT」のまとめが80か所
本文は、短い項目を積み重ねていく形です。
多くの項目の終わりには、要点を数行にまとめた「POINT」の欄がつきます。
- 本文の分量:約17.7万字(1分500字で約5時間54分)
- 「POINT」の欄:当方で数えて80か所
- いちばん長い章:心の鍛え方を扱う第2章で、本文の約4分の1
同じ教えを言い換えて何度もくり返す書き方だと、著者自身も序章で断っていました。
初めから順に読むより、気になる項目を拾って読み返す使い方に向く形です。
日本語版は、原書の前半だけを訳した本
監訳者あとがきによると、日本語版は原書の第1部、つまり心構えのところだけの訳です。
テクニカル指標の見方や、損切りの注文の使い方を詳しく書いた第2部は入っていません。
省いたわけとして、例がすべてアメリカのものであることと、分量が大きくなることをあげています。
このため、チャートの読み方や売り買いの手順を学ぶ本としては、もの足りなさが残ります。
詳しさに欠けるという批判が出ることは、監訳者もあとがきで見越していました。
読む前に知っておきたい3つのこと:出版年、著者の立場、成績
原書は2000年刊で、そのころの米国の市場が前提
原書の著作権の表示は2000年で、日本語版は2002年10月に出ました。
電子版のもとになったのは、2013年5月発行の第20刷です。
本文には、2000年前後のアメリカの市場を前提にした話がいくつも出てきます。
- NASDAQのマーケット・メーカー(自分の勘定で売り買いする証券会社)をめぐる話
- 1/16ポイントのような、分数で示す値段の刻み
- アメリカ東部時間の時刻をもとにした、時間帯の話
- 手数料の値下がりやインターネットの広がりを、新しい時代として語る序章
考え方は古びにくく、市場の仕組みの話は今の日本と違う、と編集部は見ています。
著者はトレーダー教育の会社を起こした2人
著者の2人は、トレーダー教育と投資情報の会社プリスティーンを一緒に起こした人です。
本文では、自社のニューズレターやセミナーに触れる場面が何度も出てきます。
第4章では、学ぶためのお金を惜しまず、教える人を探すようにとすすめていました。
教える側の立場から書いた本だという点は、すこし割り引いて読むのが無難です。
本にある成績の話は、当方では確かめていない
まえがきには、著者2人が最初の売り買いで大きく負けた話と、その後口座を増やした話が出てきます。
こうした成績や勝率の話は著者本人の説明で、当方では確かめていません。
本の主張をデータで計算し直す検証も、この本についてはおこなっていません。
また、短期売買は、短いあいだに大きな損失が出ることもある取引です。
まえがきの失敗の話も、数十分のうちに損失が膨らむ場面から始まります。
今の日本でデイトレードをするときの、本との違い
本の前提と、今の東京証券取引所(東証)の制度を、公式のページで比べました。
確認した日は、どれも2026年10月28日です。
| 項目 | 本の前提 | 今の日本(公式ページの記載) |
|---|---|---|
| 取引時間 | アメリカ東部時間の時刻で話をする | 東証は9時〜11時30分と12時30分〜15時30分 |
| 値段の刻み | 1/16ポイントなどの分数 | 円の単位で、銘柄と値段で変わる(例:TOPIX500の銘柄で1,000円以下は0.1円) |
| 1日の値動きの上限 | 本文に出てこない | 制限値幅がある(例:基準が1,000円以上1,500円未満なら上下300円) |
| 信用取引 | 仕組みの説明はない | 保証金は売買代金の30%以上で、最低30万円 |
| NISA | 本の時代には無い制度 | 売った商品の買ったときの金額のぶんだけ、翌年以降に枠が戻る |
出典:日本取引所グループ「売買立会時」「呼値の単位」「制限値幅」(2026年10月28日確認)
取引時間と値段の刻みは、本の例と違う
東証の取引は、午前の前場(ぜんば)と午後の後場(ごば)に分かれています。
| 時期 | 午前(前場) | 午後(後場) |
|---|---|---|
| 日本語版が出た2002年ごろ | 9時〜11時 | 12時30分〜15時 |
| 2024年11月5日から | 9時〜11時30分 | 12時30分〜15時30分 |
時間帯についての本の話はアメリカの時刻が前提なので、そのまま東証には当てはまりません。
値段の刻みも分数ではなく円で、1日に動ける値幅にも上限があります。
出典:日本取引所グループ「売買立会時間の変遷」(PDF、2026年10月28日確認)
信用取引を使うなら、損失が元手を超えることもある
信用取引は、証券会社に保証金を預け、お金や株を借りて売り買いする仕組みです。
紫垣英昭さんの本は信用取引を軸にしていますが、この本には仕組みの説明がありません。
- 委託保証金(預ける保証金)は売買代金の30%以上で、最低30万円
- 損失で保証金が売買代金の20%を下回ると、追加の保証金(追い証)がいる
- 制度信用取引は、6か月以内に返済する
借りて売り買いするぶん、値動きしだいで損失が初めの保証金を超えることもあります。
いくらまで負けてよいかを先に決めておく考え方は、この本の中心の主張とも重なります。
出典:日本取引所グループ「信用取引の目的・仕組み」「委託保証金」(2026年10月28日確認)
NISAの枠は、売ったぶんが翌年まで戻らない
新NISAでは、売った商品の買ったときの金額のぶんだけ、税金がかからない枠が翌年以降に戻ります。
成長投資枠の年間の上限は240万円で、つみたて投資枠と合わせても年360万円です。
1日に何度も売り買いすると枠をすぐ使いきるため、デイトレードとの相性はよくないと編集部は見ています。
出典:金融庁「NISAを知る」(2026年10月28日確認)
→ 関連:新NISA1800万円は何年で埋まるか|月10万で15年、月5万で30年
この本が向く人・向かない人と、そのときの代わり
向く人:負け方を見直したい人
編集部は、この本が合うのは次のような人だと見ています。
- 短期売買で負けが続き、負け方を見直したい人
- 手法より先に、売り買いの心構えを固めたい人
- 同じ教えをくり返し読んで、身につけたい人
反対に、売り買いの手順や日本の制度をこの1冊で学ぶには、向いていません。
→ 関連:日本の手順の本のレビューは 『50代でも間に合う!株デイトレード入門』レビュー|向く人と注意点
向かない人と、そのときの代わり
次のような人には、別の本や記事のほうが合います。
- 日本の口座や取引ツールの準備から知りたい人:紫垣英昭さんの『50代でも間に合う!株デイトレード入門』
- 日本の個人トレーダーの考え方を読みたい人:cisさんの『一人の力で日経平均を動かせる男の投資哲学』
- 毎日の売り買いに時間をさけない人:長く持ち続けるインデックス投資の考え方
この本の序章も、デイトレードと投資はほとんど正反対の行動だと位置づけていました。
長く持つ投資を数字で確かめたい人には、次の記事が合います。
→ 関連:老後の資産形成はS&P500一本でいい|6,500万円を定率3%で取り崩す方法
デメリットと、その対処
この本の弱いところと、読むときの対処をならべました。
| デメリット | 対処 |
|---|---|
| 詳しい手順が少ない | 手順は日本の制度で書いた本で学び、この本は心構えの見直しに使う |
| 2000年前後のアメリカの例が多い | 時刻・値段の刻み・値幅は、東証の公式ページで確かめる |
| 同じ話のくり返しが多い | 「POINT」の欄を先に読み、気になった項目に戻る |
| 著者の会社のサービスに触れる | 宣伝のところと、考え方のところを分けて読む |
損失との付き合い方を、言葉を変えて何度も読みたい人はこちら。
『デイトレード マーケットで勝ち続けるための発想術』(Kindle版、Amazon)
まとめ|次にやること
- 手法ではなく、損失との付き合い方と心構えを学ぶ本(2002年10月、約17.7万字)
- 日本語版は原書の前半だけの訳で、テクニカル指標などの手順は入っていない
- 取引時間・値段の刻み・値幅・信用取引など、今の東証とは違う前提が多い
- 本にある成績の話は著者本人の説明で、当方では確かめていない
次にやることは3つです。
- 生活費と分けて、短期売買に使えるお金と、1か月で負けてもよい上限の額をメモに書く
- 東証の「制限値幅」「信用取引の目的・仕組み」のページで、値幅の上限と追い証の条件を読む
- 読むなら、日本の手順の本のあとに、心構えの見直しとしてこの本を読む
1つめで書いた上限の額は、第3章と第5章の負け方の話を読むときの、自分のものさしになります。
1冊に絞るなら、負け方を見直したいときに読み返す本として、この本が手がかりになります。
『デイトレード マーケットで勝ち続けるための発想術』(Kindle版、Amazon)
- → 関連:老後の資産形成はS&P500一本でいい|6,500万円を定率3%で取り崩す方法
- → 関連:一括投資か積立か|『JUST KEEP BUYING』を100年で検証
- → 関連:わが投資術の割安小型株は有利か|36年のデータで検証した結果
- → 関連:投資本の読む順番|初心者におすすめの1冊目を目的別に
この記事は書籍の紹介で、デイトレードや特定の銘柄の売り買いをすすめるものではありません。
投資の判断はご自身の責任でお願いします。
制度の内容は2026年10月28日に公式のページで確認したもので、のちに変わることがあります。
